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アンカー不要なUWB屋内測位システム
 近年、IoTデバイスや移動ロボットの普及により、屋内測位技術への需要が高まっています。 様々な手法が検討される中、Ultra-Wideband (UWB)を用いた測位は、高い測位精度と低消費電力という利点から注目されています。 一般的なUWB測位システムは、環境に固定された絶対位置の分かっている複数の「アンカー」と移動体に装着された「タグ」との距離を測定し、三角測量の要領でタグの位置を推定します。 しかし、このアンカーの設置にはいくつかの課題があります。例えば、多数のアンカー設置にかかるコスト、アンカー位置の手動測定の手間、アンカーや配線による美観の低下などが挙げられます。 そこで本研究では、従来の固定アンカーを不要とする測位システムを提案し、これらの課題を解決します。
 本研究では、絶対位置が分かっているアンカーの代わりに、「タグを搭載した移動ロボット(自身の絶対位置を把握できる機能も持つ)」と「位置を推定済みのタグ」を用います。 移動ロボットが空間内を動き回る事で、移動ロボットに搭載されたタグの絶対位置と、そこからの距離情報を利用して、推定対象のタグの位置を絞り込むことができます。 また、一度位置が推定できたタグは、アンカー代わり(疑似アンカータグと呼ぶ)として扱い、そのタグ間の距離情報を使って他のタグの位置をさらに絞り込むことができます。 この2つの方法を並列して実行することで、より高速で高精度な位置推定を可能とします。
 本手法は、移動ロボットが関与し、多数の物体の位置を把握する必要がある場面で役立ちます。 具体的な応用例として、倉庫内でのAGVによる搬送作業、施設内での配膳・掃除ロボットの運用、さらにスマート家具やWPT-Robotなどが挙げられます。 ここでは、生活空間内で複数の物体の位置を特定するシナリオを例に手法の手順を説明します。 まず、位置推定対象にタグを装着します(手順1)。次に、自己位置がわかる移動ロボットがタグとの距離を測定し、タグの位置推定を行います(手順2)。 タグが移動した場合(手順3)、静止中かつ位置推定済のタグを疑似アンカータグとして利用し、タグとの距離測定およびタグの位置推定を行います(手順4)。 このように、タグが自身の状態に応じてアンカーとして機能することで、固定設置型アンカーが不要になります。
 提案手法の有効性を評価するため、MATLABを用いてシミュレーションを行い、疑似アンカータグの有無による位置推定精度を比較しました。 シミュレーションの結果、固定アンカーを使用しなくても誤差10cm以下の精度を達成し、従来手法と同等の測位性能を確認することができました。 このことから、疑似アンカータグが固定アンカーの役割を担うことで、重み計算に利用できる情報量が増加し、位置推定が迅速化されるとともに測位誤差が低減することが分かりました。





研究業績

M. Yoshizawa, T. Shimizu, S. Nakamura
"Proposal and Simulation Analysis of Anchor-Less Cooperative Positioning Method Using Multiple Tags and Tag-Mounted Mobile Robot"
IEEE Access, vol. 13, pp. 407-417, 2025. 1.





関連する研究テーマ

WPT-Robotを用いた自動電力管理システム
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研究の担当者
mirei yoshizawa

M2
吉澤美玲

taisuke sato

B4
佐藤汰亮

tomoki takadera

B3
高寺智貴