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磁界抑制可能な磁界共鳴式無線給電システム
 近年、EV(Electric Vehicle)・PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)等の電気自動車の普及が進んでいます。 現在、電気自動車へ搭載されている充電器は、充電用コネクタを車両の充電口に接続して充電するものです。 しかし、そのバッテリ容量が小さいため充電頻度が高く、ユーザによる手動の給電作業は感電リスク等の諸問題につながっています。 そこで、電気自動車の新たな給電方式として無線給電が注目されています。 無線給電を利用する事で、給電可能な範囲内であれば充電用コネクタ等の物理的な接続無しに給電することが可能となるため、これら諸問題の解決策として期待されています。 無線給電の方式の中でも、位置ズレや伝送距離の優位性の高さから、磁界共鳴式が近年注目されています。
 磁界共鳴式無線給電では、コイル間の磁界の結合によってエネルギの伝送を行っているため、コイル近辺に導体や磁性体などの干渉物が存在する場合、磁界が吸収され干渉物の異常発熱やそれに伴う伝送効率の低下が問題となっています。 電気自動車への無線給電においても干渉物による異常発熱が問題となっており、市販化されている電気自動車向け無線給電システムには、 センサを用いて干渉物を検知し送電を中止する機能が搭載されています。 これに対して本プロジェクトでは、駐車場での電気自動車への給電といった用途で、干渉物が存在する状況下でも熱損失を避けながら給電を継続するアプローチを考えています。
 磁界共鳴式無線給電では、コイル近辺で磁束密度が高まり、干渉物による損失も増加します。 従って、このようなアプローチを実現するためには、干渉物の存在する領域において磁界を低減しつつ、無線給電の効率を維持することが求められます。 磁界共鳴式の無線給電において磁界分布を制御するには、送電コイルとしてフェーズドアレイコイルを用いることが有効と考えられています。フェーズドアレイ送電コイルの配置、各送電コイルへの入力電圧の位相・振幅を最適化するプログラムの作成を進めています。
 シミュレーション出力結果の一部を紹介します。まず、1つの送電コイルと受電コイルが対向している一般的な無線給電の構成では、磁界強度の最大値は4.93kA/m、評価点の磁界強度総和は28.9kA/mでした。 次に、5つの送電コイル配置、各送電コイルへの入力電圧の位相・振幅を最適化した結果は磁界強度の最大値が230A/m、磁界強度総和が3.45kA/mとなりました。ここで、送電効率は常に85%以上を維持しています。この結果から一般的な構成に比べて最大値は95.6%、総和は88.1%の磁界抑制効果が得られたことが分かります。 提案する手法により、フェーズドアレイ送電コイルを用いることで任意の一点で磁界を抑制しながら、高い送電効率で給電することが可能であると確認できました。




研究の担当者
shuta ishida

B4
石田周汰