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次元スケーリングバイラテラル制御を用いた下肢操縦インタフェース「FRIC」
 近年の通信技術の発展に伴い、遠隔地からロボットを操作し、あたかもその場に存在しているかのような操作体験を可能にする「テレイグジスタンス技術」に注目が集まっています。 社会実装に向けて、テレイグジスタンス技術を用いた実証実験やデモンストレーションも数多く行われています。 しかし、そのようなシステムの多くでは、 手元のコントローラーのみでロボットの全身を操作しており、 移動操作と上半身操作を切り替えるたびにモード切替が必要となります。
その結果、操作の煩雑化や作業効率の低下が課題として指摘されており、 遠隔ロボットの上半身と下半身の操作を同一のコントローラーで担うことには限界があると考えられます。
図1 操作効率向上のために上半身・下半身操作を分離した遠隔操作の例
引用元: Robust Immersive Telepresence and Mobile Telemanipulation: NimbRo wins ANA Avatar XPRIZE Finals
 そのため現在、遠隔ロボットの上肢操作と下肢操作でコントローラーを区別する操作手法が注目されています。実際に設定されたタスク完了までの時間を競い合う大会では、図のように上半身と下半身で操作を区別したチームが優勝しています。
この操作手法では単一のコントローラーで操作していた際に必要であった操作の切り替えが不要な上、 ロボットを下半身で移動させ、上半身で操縦するといった操作が人間が普段から行う動作と一致しており、より自然な操作が可能になっています。このことから、上肢と下肢でコントローラーを区別するということが操作効率的な観点から重要であると考えられます。
 また我々は先述した上肢と下肢での操作分割に加え、力覚の提示も重要であると考えました。
力覚提示により、映像の切り替えや視野の分割を行うことなく、物体との接触の有無やその際の力の大きさなどを操縦者に伝達することができます。これにより、操作の判断材料を増やすことが可能になる上、我々が日常生活で力を感じているように、より人間本来の感覚に近い状態で操作を行うことができます。このような数々の利点からロボットの上半身操作においては力覚提示は比較的ありふれたものとなっています。しかし、車輪型移動ロボットを対象とした下半身操作では力覚提示が行われている事例が非常に数少なく、またそれらは現実の力覚を提示したものではありませんでした。
図2 上半身操作に用いられる力覚提示付き遠隔操作コントローラー
引用元: Analysis and Perspectives on the ANA Avatar XPRIZE Competition
図3 次元スケーリングバイラテラル制御を用いたFRICのシステム概念
 こういった「車輪型移動ロボットの下半身操作では現実の力覚提示が行われていない」という現象の背景には操作可能範囲の矛盾といった理由が存在します。
例えば一般的なロボットの上半身における操作範囲はアームの可動範囲であり、人間の上半身の可動範囲と一致します。
しかしながらロボットの移動範囲は基本的に無限であるのに対して、操縦者の移動可能範囲は滞在場所に依存して有限であり、矛盾しています。
そこで我々は、操作可能範囲の矛盾を解決するため、次元スケーリングを適用したバイラテラル制御を採用しました。
これにより、定点から下肢のみでの直感的な操縦と力覚提示を両立するインタフェース「FRIC(Foot Reactive and Intuitive Controller)」を実現しています。
 このFRICでは以下のように、大きく分けて3つの処理が絶え間なく繰り返されています。
                         ① 各デバイスの現在の位置や速度等を推定
                         ② 理想とする挙動から現在どれだけの差異が生じているかを①の情報を元に導出
                         ③ 導出した差異を解消する操作指示を生成
我々は①→②→③を1サイクルとし、200 [μsec]でこの1サイクルを処理しています。
図4 FRICシステムで採用した制御器
図5 FRIC操作時における遠隔移動ロボットの
速度同期および力同期の実験結果
引用元: 次元スケーリングバイラテラル制御を用いた遠隔ロボット移動操作のための下肢操縦インタフェース「FRIC」の開発と評価
 上記の処理を採用した実機実験より、FRICの位置と遠隔移動ロボットの速度が同期されていること(図左)や、FRICの受けたトルクと遠隔移動ロボットが与えた力(力は正負逆向き)が同期されていること(図右)を確認できました。
これらの同期は同時に達成されており、このことからFRICを用いて速度指示を行いつつ、力覚提示も可能であることが確認できました。
 また我々はこの下半身操作における力覚提示が操作効率の観点から有用であることを示すことができました。
遠隔操縦システムにおいて操縦者は遠隔ロボットに付随するカメラからの映像を元に操作を行いますが、 足元が死角になっている場合や、カメラの角度が固定されている場合もあり、足元の確認は容易ではありません。
我々はこの状況を想定した実験を行い、ロボットの移動操作では下半身操作と力覚提示の組み合わせが最も操作効率が良いことを示すことができました。
図6 下半身操作における力覚提示が遠隔移動操作の
効率向上に与える影響を評価する実験環境
引用元: 次元スケーリングバイラテラル制御を用いた遠隔ロボット移動操作のための下肢操縦インタフェース「FRIC」の開発と評価
図7 下半身操作による3自由度遠隔移動操作を可能とするFRICシステム
現在は前後方向と旋回方向への移動に加え、左右方向への移動も可能となるようなFRICの自由度の拡張が完了しています。
現在は3自由度におけるFRICの有用性を示すことを目標に研究を行っています。


図8 FRICを用いた遠隔操作システムの使用イメージ




研究の担当者
rikuto omori

M1
大森陸玄

yoshida kase

M1
吉田佳世

sui hanlin

M1
Sui Hanlin

arai ryota

B4
荒井崚太

sato taichi

B3
佐藤 汰一