近年、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、IoTデバイス をはじめ、我々の日常生活において電子機器やセンサが急速に普及しています。
その一方で、デバイスの電力確保が課題となっています。この課題の解決方法の一つとして、無線給電が注目されています。
特に、人体への影響が少なく、より高効率を実現できる磁界共鳴式無線給電の実用化が期待されています。
本研究では,キャパシタのソフトスイッチングにより等価的な容量値を制御可能な回路を利用し, より高い電力伝送効率で複数デバイスへの磁界共鳴式無線給電を行うことを目指しています。
送電側と受電側のコイルが1対1の場合、送電側のキャパシタC1を変動させることで、受電側の負荷抵抗で得られる電力PRLが変動するという特性があります。
また、受電側のキャパシタC2を変動させることで、PRLと電力伝送効率が変動するという特性もあります。
この特性を利用し、C2→C1の順番で容量値を変動させ、最大電力伝送効率となるC2の値、最大負荷電力となるC1の値に固定することで、
送電側の共振周波数と受電側の共振周波数を電源周波数に一致させ、磁界共鳴式無線給電を実現できます。
送電側が1つ、受電側が複数の場合、受電側のコイル間でクロスカップリングが発生します。
これにより、「受電側・送電側の共振周波数が電源周波数に一致する場合に最大電力伝送効率を実現する」とは限りません。
また、給電対象が複数の場合、送電側と各給電対象の結合係数や要求する電力が異なる状況も考えられます。
つまり、受電側が複数の場合、受電側が1つの場合と比べ、制御要求が複雑になります。そこで、クロスカップリング存在下で、各デバイスの所望電力を分数で表した所望電力比と効率最大化の双方を実現する手法として、受電側の負荷抵抗の制御に加えて、新たに容量値も制御する手法を提案しています。
受電側が2つの場合において、所望電力比Pa、結合係数kt1,
kt2、クロスカップリングk12を指定し、受電側のキャパシタと負荷抵抗を可変とする場合(以下4変数)と、負荷抵抗のみを可変とする場合(以下2変数)におけるシステム全体の最大電力伝送効率を比較しました。
また、2変数時は、受電側の共振周波数は、送電側周波数と電源周波数と一致するようにキャパシタの値を選択しました。クロスカップリングが発生する場合、4変数時のほうが、最大効率が大きくなることが確認できました。特に、Paに対し、4変数時と2変数時の最大効率差が5%以上となるkt1、kt2、k12の組み合わせを3次元グラフにプロットすると、図のような特性があることを確認できました。